エッジは本物だった。だが、手元には残らなかった

自動売買 検証記

前回、キャリー(金利差を取る作戦)を検証して、9年半で+21.8%という結果が出た。この連載で初めてのプラスである。

ただし、あれには但し書きがついていた。業者の取り分をゼロにした、あり得ない世界での計算だったのだ。

今回は、そこに現実を入れる。


まず、この一枚を見てほしい

黄色が前回の結果。業者の取り分ゼロで+21.8%。

赤が、同じ戦略を、俺の口座の実際のスワップでやり直した結果である。

マイナス10.3%。

戦略は同じ。期間も同じ。売買のタイミングも一つ残らず同じ。違うのはスワップの条件だけである。それだけで、9年半で32ポイント分の差がついた。

しかも、よく見てほしい。2つの線は時間が経つほど離れていく。毎日ちょっとずつ抜かれるものなので、持てば持つほど差が開く。キャリーは長く持つ戦略だから、これが一番効く形で当たっている。

なんでやねん。エッジは実在したのに、手元には残らへんのか。


どこへ消えたのか

原因を特定するのは簡単だった。もらえるはずの金利と、実際にもらえる金利を並べればいい。

灰色が「国と国の金利差」。つまり本来もらえるはずの分である。

金色が「実際に口座に入ってくる分」。

例えば一番上のUSDCHF(ドル/スイスフラン)。金利差は3.75%あるのに、実際にもらえるのは2.07%。1.68%がどこかへ消えている。

GBPJPY(ポンド円)はもっとひどい。金利差3.25%に対して、もらえるのは0.74%8割近くが消えている。

この差が業者の取り分である。俺の口座で全28ペアを平均すると、こうなった。

年率
金利差の平均(本来もらえるはず)1.69%
業者の取り分の平均2.20%

取り分の方が、金利差より大きい。

これを見たとき、俺はしばらく画面を見つめてしまった。エッジが小さいから負けたんやない。エッジより手数料の方がデカかったのだ。


悪いことをしているわけではない

念のために言っておくが、これは違法でも詐欺でもない。業者だってタダで働いてくれるわけがない。

スプレッドが業者の取り分であるのと同じように、スワップにも取り分が乗っている。ただスプレッドと違って、スワップの取り分は表に出ていない。

スプレッドなら「0.2銭」と書いてある。だがスワップは「買い150円/売り-250円」としか書かれていない。そこから業者がいくら抜いているかは、自分で計算しないと分からない。

だから俺は今まで、抜かれていること自体に気づいていなかった。


この連載で、初めて見えたこと

ここで、今までの検証を並べ直してみる。

作戦エッジは実在したか結果
逆張り(Wボトム)❌ 見つからず不合格
順張り(トレンドフォロー)❌ コストゼロでも-44.5%不合格
YouTube手法2つ❌ 相場依存不合格
キャリー+21.8%で実在業者の取り分で消滅

負け方の質が、初めて違う。

今までは「作戦そのものに力が無い」という負け方だった。だからどう工夫しても無駄だった。コストをゼロにしても勝てなかったトレンドフォローが、その典型である。

だが今回は違う。作戦には力があった。消えた理由は作戦の外側、取引する場所の条件にある。

これは、俺にとって全く別の意味を持つ。作戦の力は自分では変えられない。だが、取引する場所は選べる。


つまり、こういうことか

俺はクロちゃんに聞いた。

「ほな、取り分の少ない業者を使ったらどうなんねん?

返ってきた答えが、この連載で一番おもしろい話につながった。

日本のFX業界には、スワップの取り分がほぼゼロの会社が実在するというのだ。しかも1社や2社ではない。

次回、そこの実際の数字で、もう一度この計算をやり直す。

ではまた。


【付録】検証の詳しい仕様(追試したい方だけどうぞ)

  • 戦略・期間・銘柄は前回と完全に同一(主要8通貨の28ペア、2016年8月〜2025年12月、月次リバランス、上位5ペア保有)
  • 唯一の違い:スワップに業者の取り分(マークアップ)を入れたかどうか
  • 取り分の推定方法:「今日の政策金利差」から「今日の実際のスワップを年率換算した値」を引いた差を、その業者の取り分とみなす。買い方向・売り方向で別々に算出し、マイナスにはならないよう下限0とする
  • 結果の比較
取り分ゼロ実際の口座
総損益(9年半)+21.8%-10.3%
勝ち負けの比率2.140.72
最大ドローダウン17.9%25.9%
プラスの年6/104/10
  • 取り分の実測(全28ペア平均、年率):買い方向1.10% + 売り方向1.10% = 合計2.20%
  • 金利差の平均(絶対値):1.69%

この検証の弱点(正直に)

  • 取り分が「今と同じ水準で9年半続いていた」と仮定している。実際には業者は随時変更するため、これは検証不能な前提である
  • 政策金利の履歴は公開情報からの再構成であり、細かい誤差があり得る
  • スワップは同じ業者でも時期・キャンペーンにより変動する

【おことわり】この連載は個人の検証記録であり、投資助言ではありません。特定の業者を批判する意図はありません。記事中の数字は2026年8月時点で確認した実測値、およびそれを用いたバックテスト(過去データによる模擬計算)の結果であり、実際の運用成績とは異なります。スワップポイントは業者・時期により変動します。FXは元本を失うリスクのある取引です。

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